弔い

愛犬が死んだ
悪性の腫瘍による安楽死だった
15年も生きていたので長生きといえるだろう


「悲しい」という気持ちがあるが、涙が出てこない
「死」ということに疎いのかもしれないが
それ以上に俺はカラッポな存在だということだ
日常で心から感情が沸いているのか
無意識にそのように偽っているのかすら、自身にもわからない
故に不完全どころか空であるのだ


実際に俺は「オレ」であり「私」であり「僕」であることを考えておくべきであろう
自分でも良く分からないままに「俺」を演じている「自分」がある可能性に時々襲われる
人はこんな症状を「心の病」と言うらしいが、物心ついたときからこのような考え方なのだ
「ソレ」が「アタリマエ」になった人間にとっての「ソレ」とは何なのか?
それをこれから考えながら生きる必要がある
「ソレ」が今の「俺」に課せられた義務なのだろう


俺はこんな人間だが
せめて愛犬には安らかに眠っていただきたい